上海都市空間芸術祭全体計画 および 1年/10000年

masterplan of SUSAS / one year, ten thousand years

2019

総合ディレクター | 北川フラム
ディレクターチーム | アートフロントギャラリー、空間構想一級建築士事務所、三輪アトリエ一級建築士事務所
キュレーター | 阮昕
空間ディレクター | 川添善行
アーキテクト | 章明

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都市構造を再構築する芸術祭

 建築の20世紀は、急激な工業化が場所性の喪失をもたらした100年でした。鉄やガラス、コンクリート、空調設備やエレベーター、交通システムなどの発達は、世界中のほとんどすべての都市を似たような姿に変えてしまいました。その結果、人々の都市への想いは希薄になり、自分のアイデンティティを喪失するかのような現実に直面しています。
 その反省を乗り越えるために21世紀があるのだとしたら、この芸術祭はその第1歩だったと100年後に言われるかもしれない、私はそのように思っています。これまでの長い歴史を理解した上で、1つ1つの場所を探し当て、その場所にふさわしいアートが埋め込まれて行く。上海という街の中に存在する、「歴史のツボ」を顕在化するように現れる1つ1つのアートは、上海が世界中のどの都市とも異なることを証明するように配置されています。芸術を通して、上海という都市を多層的に理解すること、それこそが私たちがこめたもう一つの願いです。

黄浦河沿いの5.5kmの敷地全体を活用したマスタープラン

上海都市空間芸術祭全体計画

 都市の中心を流れる黄浦川沿いの5.5kmの敷地にアートを戦略的に配置することで、都市再生の起爆剤とするというものです。上海市としてもこれからの再開発に期待しているエリアで、将来的な整備計画をふまえつつ、1つ1つの場所性を理解していくこと。その全体的な空間のイメージに対して、アーティストとの組み合わせを創発的に提案していくことが全体計画に求められた内容でした。この全体計画を通して、都市構造を再構築し、上海という都市に新たなリバーサイドが創出されつつあります。

Felice Varini氏の作品

かつてのクレーンを活用したアートを通して、上海の歴史を感じることができる

高橋啓祐氏の映像作品が上映

かつての造船場のドックを活用したオープニング会場

1年/10000年

 黄浦川沿いは、上海の工業化が進む過程の中で、多くの工場などが立地していましたが、産業構造の転換に伴い、こうした工場は郊外に移転するなど、空間的な再編が求められていました。かつて石鹸の製造に利用されていた工場の空間を、人が滞在できるアート作品とするものです。石鹸製造に合理的につくられたかつての工場は、液体を通すトンネル状の空間があったりと、まるで洞窟のような場所でした。その洞窟性をふまえ、鍾乳洞のような空間をつくることをイメージしました。石鹸は、塩化ナトリウム(塩)と混ぜ合わせるとコロイド反応を起こし、すぐに固化します。今回つくった鍾乳洞のようなアート作品は、本来であれば大地が10000年かけてつくりあげる空間を、石鹸を媒介にした化学反応によって1年で生み出されました。

1年/10000年

コロイド反応の実験の様子

制作にあたり、石鹸の塩によるコロイド反応の実験を行い、使用する石鹸の種類を検証

工場検査の様子

現地のFRP工場にて関係者による確認

完成写真

上下はいくつかの距離が設定されている

完成写真

内部に仕込まれた照明がONとOFFを繰り返す
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